【モバマス】中野有香「月のロケット」【百合】
【モバマス】中野有香「月のロケット」【百合】
中野有香が密かに自室のベッドで自涜に耽るようになったのは、三回目のデートからだ。
何の事はない女の子同士の買い物や食事に、キスという添え物が出来ただけのデート。
しかしそれだけの事が有香の毎日に今までにない満足感を与え
光に似た温かな歓びをもたらしたのだ。
そして件の人物と別れた後には必ずと言っていいほど
言い様のない喪失感と寂しさが募った。
彼女の傍に居て、同じ時間を共有するだけで
これほど日常は彩り豊かになるのかと気づかされた。
「……ぁあっ……ん……ンン……」
家族の寝静まった真夜中。一人でベッドに籠り、とりとめのない妄想の大海に有香はたゆたう。
空手に没頭していた少女の白くも力強い指先が今、ほんのりと熱を帯びている。
己の慰め方を知らない無垢な彼女が、手探りで己の感所に
指を添えて擦る真似をし始めたのは、彼女と付き合って一ヶ月目の事だった。
事務所の女友達の話を盗み聞きして、こっそりと始めてみたものの
この慰めはこそばゆいばかりで快感も何もなかった。
だが、彼女はとりつかれたようにそれを毎夜繰り返す。
そうでもして気を紛らせなければ体も思考も
意思から離れて疼いてたまらず、どうにかなってしまいそうだった。
「ぁはぁ……ん……く……」
有香が手にしているハンカチは、誕生日に彼女がプレゼントした物だ。
上等なシルクのハンカチで、彼女と同じ香水の匂いがした。
有香はそれを鼻先に押しつけて自涜するのがすっかり癖になってしまった。
いつ終わるか分からない夢想の中で、彼女は
どこまでもゆかりに寄り添い戯れる自分を創った。
――幾度も訪れた緩やかな波の果てに、白い霞がほうと薄く広がり
ようやく彼女は一段落ついて小さな吐息を漏らす。
事をなした後、有香はいつも後味の悪いモヤモヤとした罪悪感に胸を包まれた。
あのどこまでも可憐で清純な恋人を浅ましい想いをもって
汚していた自分を情けなく感じ、申し訳ない気持ちになった。
そしてそんな気持ちのまま、また彼女に会える喜びを抱きながら
有香はまたいつものようにそっと眠りにつくのだった。







