善子「――九つ墓村?」 前編
善子「――九つ墓村?」 前編
289: 名無しで叶える物語(泡盛) 2023/08/09(水) 23:03:19.51 ID:uBKCq3VI
この暗い洞窟に現れた自分以外の人間。驚いた善子はその妙な影に向かって光源を照射し続け、目をこらした。
だが、距離が離れているせいか薄っすらとしか見えず、その輪郭もあいまいで男か女か不明であった。
善子「そこにいるのは誰よ!」
強い口調で呼びかけてみるが、それは動く気配がない。
待ち構えているのか、それとも……。
普段の善子なら怖くて動けなかったろう。なぜかその時は、正体をつきとめてやろうという勇敢さが勝っていた。
善子「あっそう、それならこっちから行くわよ……!」
そいつを見失わないよう懐中電灯で照らしながら、歩みを早めて一気に詰め寄る。
ついにそいつの足もと――台座のような岩まで迫った。
そこまで近づいても、その人影は無言のまま動かない。そして、ようやくその姿がはっきりと見えた。
善子「……何よ、ただの甲冑じゃない。脅かさないでよ」
安堵して悪態をつく。
岩の上にあるその甲冑は、戦国時代の武将がつけるもので、四角い箱の上に腰かけていた。
まるで本陣で鎮座する戦国大名みたいに堂々としている。
善子「こんなところに置いているから、ボロボロね……」
長い年月が経っているのか、鎧のあちこちが風化し、金属部分にいたってはすっかり錆びに覆われている。
善子「きっと果南のいたずらね。鎧の置物で人を驚かせようって魂胆でしょ」
肩をすくめた。





