荒木比奈「世界の真ん中」

荒木比奈「世界の真ん中」

2: ◆U.8lOt6xMsuG 2018/05/09(水) 18:30:22.08 ID:6+uFeMGE0
とある場所、とある駅前。強くなりかけている日差しを避け、俺は木陰で人を待ち続けていた。腕時計を見ると、約束の時間まであと3分程だと言うことが分かった。

「お、お待たせしました!」

それから10分ほどしてから、荒木比奈はやって来た。緑のワンピースの裾を揺らし、汗を額に滲ませながらやってきた。

「待ってねえよ」

「え、でも約束の時間はもう…」

「俺も遅刻したから」

嘘を吐いた。比奈は疑っているような表情で俺を見ながら、汗をタオルで拭っている。いつもより何割か増してボサボサな髪で、比奈が寝坊をしたことが分かった。

「で、どこに行くんだ?」

比奈に何かこれ以上問い質されるのも面倒なので、話を切り上げ別の話題を出した。すると比奈は、眉をひそめながら鞄から手帳を取り出し、付箋の貼ってあるページを開いた。それから、近くにあったバス停を指さす。

「そうっスね、あそこでバスに乗ってから…」

比奈に言われるまま、バスに乗り込む。俺が通路側、比奈が窓側に座った。肘と肘が触れ合うくらいの距離で、発進するまで落ち着かなかった。

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