古泉「ただいま」
古泉「ただいま」
ま、そりゃそうだ。明けない夜なんてモンは無いし、どんだけ繰り返しても、それこそ終わらない夏休みなんて夢のようなモンさえ世界には無かったんだ。
時は待たない、ってヤツだな。はて、これは誰が言ったんだったか。誰が言ったにしても含蓄有る言葉だね。うむ。
つまり、時間ってーのは宇宙人だろうと未来人だろうと超能力者だろうと、はたまた神様であったとしても、平等に過ぎ去っていくように出来ているらしい。ん? そんなんは常識だろって?
いやいや、その常識ってーのを疑っていたのが昨年までの俺だったりするんだ。もしかしたらループエンドだったりすんじゃないのか、とかも多少本気で考えたりもしたね。ああ。
こら、そこ。ゲーム脳乙とか言ってんじゃねえぞ。
もしもだ。もしも仮にアンタが俺と同じ状況に追い込まれてみろ。俺と体を入れ替わり、高一の八月であったり十二月であったり、高二の四月であったり七月であったりを経験してみろ?
俺は断言するね。今、画面の前でふんぞり返ってるアンタだって時間感覚ってヤツに多少の弊害を持っちまうだろうってさ。
SOS団で唯一の一般人であり、かつ、まあ自分で言うのもなんだが比較的常識人な俺でさえこの始末だ。その俺が語り部の、そんな物語を楽しんでるアンタらなんかは最たるモンだと思うね。違うか?
だがしかし。それでも俺達は順調にハルヒ出題の問題(一つ残らず難題で無理難題なのは、まあハルヒらしいっちゃらしいんだが)を解き明かし、潜り抜け、あるいは素通りして……。
ああ、ここまで言えば分かるだろ? 大体、話の骨子は読めたよな?
俺達は無事に三年生に進級したのであった。
つまり、この話は後日談ってヤツだな。
神様が居た面白おかしく、波乱万丈、驚天動地で支離滅裂な、その残り香だけがほんのりと桜吹雪に乗って校舎を包み込む。
そんな感じの、取り立てて面白味も無い、フツーの日々、ってヤツを、俺はこれから語っていこうと思う。
勿論、主役は俺じゃない。
この話の主役は……いや、これまでのどの話の主役もそうだったのだが。
最初から最後までクライマックスでお馴染み。
俺達の団長様だ。
そう。やっぱり後日談であってもスポットライトはコイツに当たる。
涼宮ハルヒ。
何を隠すでもない。俺の、恋人である。