工藤忍「染まるよ」
工藤忍「染まるよ」
1: 以下、名無しにかわりましてSS速報VIPがお送りします 2025/12/13(土) 13:11:51.14 ID:+p98PieH0
「大丈夫、ひとりで帰れるから。……それじゃあ、お疲れ様でした」
未練が私を座布団に縫い止めて、『しんでれら』を出たのはずいぶん遅くなってしまった。のれんを上げて夜風を吸い込むと、後ろからプロデューサーさんに呼び止められる。家まで送ろうかという申し出はやんわり断った。歩いて帰っても差し支えないくらいの距離だし、私ももういい大人だし。なにより、まだ賑やかなままの座敷から主役の彼を連れ出していいわけはない。
夏にしてはひんやり涼しい、いい夜だった。雨上がりの空に月は首を傾げながら、じきに訪れる満月の晩を待っている。湿った風が火照った顔にちょうどよくて、私は歩調を少しだけゆるめた。少し離れたところで踏切の音が鳴った。時間を考えるとたぶん終電だったんだろう。あたりには車の通りもまばらで、東京は穏やかに夜を越そうとしていた。
未練が私を座布団に縫い止めて、『しんでれら』を出たのはずいぶん遅くなってしまった。のれんを上げて夜風を吸い込むと、後ろからプロデューサーさんに呼び止められる。家まで送ろうかという申し出はやんわり断った。歩いて帰っても差し支えないくらいの距離だし、私ももういい大人だし。なにより、まだ賑やかなままの座敷から主役の彼を連れ出していいわけはない。
夏にしてはひんやり涼しい、いい夜だった。雨上がりの空に月は首を傾げながら、じきに訪れる満月の晩を待っている。湿った風が火照った顔にちょうどよくて、私は歩調を少しだけゆるめた。少し離れたところで踏切の音が鳴った。時間を考えるとたぶん終電だったんだろう。あたりには車の通りもまばらで、東京は穏やかに夜を越そうとしていた。
SSWiki : http://ss.vip2ch.com/jmp/1765599111







