律「あの日の放課後」
律「あの日の放課後」
0003以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします
2010/11/21(日) 16:54:03.22ID:Hy5BKYaI0
桜高を卒業して、もう五年は経とうとしていた。
私が部長を務めていた軽音部のメンバーと一緒の大学に進学はしたものの、今は疎遠になっている。
私は大学をなんとか現役で卒業後、苦難の連続で結局どこにも就職できなかった就職活動の末、
昔の知人の勧めで雇ってくれた楽器店で一応、正社員として働いている。
楽器店で働く毎日は楽しい。
だけど、どうしてか毎日が虚しい。
たまに高校生くらいの子たちが店に来たりすると、バンドを組んでいた頃が無性に懐かしくなる。
そういうとき、私は必ずある場所を訪れていた。
「よっ、久しぶり」
駅前の路上で弾き語りをしている、相変わらず小さな後姿に声を掛ける。
私たちのたった一人の後輩だった中野梓。
「律先輩!」
「調子どう?」
「まずまずですかね」
梓は苦笑を浮かべると、自分の前にあったギターケースを持ち上げて、それに溜まった小銭の数を
私に見せた。それから、その小銭をズボンのポケットにねじ込むようにして入れると、ギターをケースに
仕舞って立ち上がった。