提督「雨の日の小さな謀略」

提督「雨の日の小さな謀略」

2: ◆1VwSTfn.DM 2016/07/07(木) 14:13:46.08 ID:Biw5qICqO
「降らないって言ったよな……」

 スーパーの出入り口、自動ドアの向こう側の景色を見て、つい、ぼやいてしまった。 ぼやくのも無理はない、と心の中で誰かに言い訳をする。
 何せ目に映る景色は轟、あるいは豪……とまでは言わないものの、気分をうんざりさせてくれる程度には雨が降り注いでいるのだから。
 そして、俺の両手には手提げ鞄と二、三のビニール袋がぶら下がっている。傘はない。うんざり度は十割増しだ。
 出掛け始める前から既に雨降りの兆候は目に見えていたのだが、何故こうなったのか、ということについては考えを張り巡らせる必要もない。

「確かに雨は降りそうだけど、予報では日が落ちてから降り始めるって言っていたから大丈夫だよ。そんな訳だから早く急いで買い出しに行ってきてもらおうか」

 とまあ、そんな具合に秘書当番の時雨にやれ行けそれ行けと急かされたせいだ。沢山買ってもらうつもりだし傘も荷物になるからいらないよね、という気遣いまで見せてくれて大変迷惑をしている。
 何故俺が買い出しに、と反論したら僕は仕事で忙しいから、と。秘書の仕事分くらいまとめてやってやると言えば提督は他の子と遊んでばかりで仕事にならないじゃないか、と言われる始末。主に漣が原因だが否定しきれないのも情けない事実であって。

「…………」

 いや、それにしたって傘を持たせないなんてことがあるだろうか。
 梅雨の時期で、空は今にも泣き出しそうで。そんな状況で傘を持たせない? 何かと理由をつけてまで? 何故? 一体何のために?
 手っ取り早く浮かぶのはあまり嬉しくも喜ばしくもないものだが、

「時雨に嫌われるようなことしたっけ……」

 辿り着くのも必然と言える答えで。 嫌われているからこんな仕打ちを受けた、と。
 年頃の女子は気難しいと聞くが……一応、人様の娘っ子を預かる身分として注意を払っていたつもりでもこのザマか。情けないやら何やら。

続きを読む

続きを見る(外部サイト)